2 損害賠償義務者 誰に損害賠償を請求できるのか
民法709条では「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。これを不法行為責任といい、交通事故の加害者とは、この不法行為をした者にあたり、損害賠償責任を負うことになります。 また直接の加害者以外でも、加害者の使用者や運行供用者に対して請求できる場合があります。損害賠償制度の目的は被害者の損害の補てんであるため、使用者や運行供用者に賠償責任を負わせることによって、より確実に損害の回復を図ることができます。
| 義務者 | 根拠条文 | 人的損害 | 物的損害 |
|---|---|---|---|
| 加害者(事故を起こした運転者) | 民法709条 | ○ | ○ |
| 事故を起こした運転者の使用者 | 民法715条(使用者責任) | ○ | ○ |
| 運行供用者 | 自賠法3条 | ○ | × |
加害者が死亡した場合
加害者が交通事故によって死亡したときは、加害者の相続人が損害賠償の責任を負うことになります。つまり被害者としては、まず、加害者の第1順位の相続人を探して、その相続人に対し損害賠償請求をすることになります。
加害者が未成年の場合
加害者が未成年である場合に、法的な判断ができる年齢、つまり責任能力があれば未成年者本人が責任を負うようになっています。未成年者が責任能力を備えるのは、小学校を終えるころと考えられています。
一般的に小学校高学年(11~12歳)未満の者は責任能力がないとされ、責任能力のない未成年者が加害行為をした場合は、未成年者の監督義務者である両親に責任が生じます。加害行為をした未成年者が責任能力を認められるときには、監督義務者(民法714条)の適用はなく、未成年者自身が責任を負います。
ただし未成年者が責任を負うとしても、通常未成年者は賠償資力が十分ではないため、判例は被害者が、監督者に監督上の過失があり、それが未成年者の加害行為につながったことを立証すれば、加害者の監督者に対して不法行為による損害賠償請求(民法709条)をすることができるとしています。
事故を起こした運転者(加害者)の使用者
従業員が業務中に他人に違法な行為をして損害を与えた場合には、企業はその損害を賠償する責任を負わなければなりません。民法715条1項では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています。これを「使用者責任」と呼びます。つまり、交通事故においても業務中に従業員である運転者が起こした事故については、被害者は使用者である企業に対し、損害賠償請求ができるということです。
従業員が起こした交通事故について損害賠償をした使用者は、従業員に対して全額求償することはできません。このような求償を認めると、個人の負担が大きくなり、何のために自賠責保険や任意保険の制度があるか分からなくなるからです。
運行供用者
自動車損害賠償保障法(自賠法)3条で「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害賠償を賠償する責に任ずる。」と運行供用者について規定があります。加害者以外の者、例えば自動車の所有者等にも損害賠償責任を発生させることにより、被害者が損害賠償請求をしやすくなるために設けられた規定です。運行供用者とは、当該自動車の運行につき、「運行支配」、「運行利益」を有するものをいいます。
例えば加害者が経済的にも独立していない学生の場合、被害者は損害賠償請求をしても、賠償能力がありません。そういった場合に、加害車両の名義は運転手である学生であっても、実際当該車両の維持費を学生の親が出していた場合など、親には「運行供用者」としての責任が生じ、被害者は加害者の親に対して損害賠償請求をすることができることになります。ただし運行供用者責任は人身事故にだけ適用されますので、物損事故の場合には責任を問うことはできません。
| 運行供用者と なりうる場合 |
|
|---|---|
| 運行供用者と ならない場合 |
|
| ※運行供用者に該当するかどうかの判断は個別の事例につき判例を参考にして検討する必要があります。 | |
運行供用者が免責される場合
事故の直接の加害者だけではなく、運行供用者にあたる人は、広く人的損害に対して損害賠償責任を負います。自賠法は被害者の保護を目的に制定された法律のため、加害者の免責はほとんどないと考えたほうがいいでしょう。交通事故の加害者(自己のために自動車運行の用に供する者)が免責となるためには、次の3つの条件すべてを加害者側が立証しなくてはなりませんが、立証は不可能に近く、実際には被害者が損害賠償をとりやすくなっています。
- 自己のために自動車運行用に供する者および運転者が自動車の運行に注意を怠らなかったこと
- 自動車に構造上の欠陥、または機能障害がなかったこと
- 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと


