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4 自動車保険以外の保険の活用

社会保険の活用

自動車事故により傷害を負った被害者は、加害者に対する、民法ないし自賠法による損害賠償請求権、自賠責保険の保険会社に対する損害賠償請求権(直接請求権)を取得すると同時に、健康保険や労災保険による保険給付請求権を取得します。つまり健康保険、船員保険、労働災害補償保険(労災)などの社会保険で給付される治療費、休業補償の制度は、交通事故の場合にも利用できます。

このうちどれを行使するかは被害者の自由ですが、これらはいずれも被害者の損害を補てんすることが目的であり、被害者に生じた損害以上の利得を与えるものではありません。二重に補償を受けることはできませんので各種保険間で請求権の調整が行われます。

国民健康保険

交通事故の場合、健康保険を利用できないといわれる場合も少なくありません。しかし、これは間違いであり、健康保険取扱いの指定を受けている医療機関である限り、交通事故で負傷した場合でも保険証を提示して健康保険の利用を受けることができます(ただし勤務中、通勤中の交通事故であれば労災保険を使います。)。
加害者が100%悪い交通事故の場合は、損害を請求できますので、自由診療を受けても差し支えありませんが、被害者側にも過失があるような場合は、健康保険を使わないと、後で高額な医療費を自己負担することになりますので注意しましょう。

健康保険による保険給付を全額受けた場合、さらに加害者から損害賠償を受けることは認められません。二重の給付を防ぐために、交通事故による負傷に健康保険を利用する場合は、健康保険に対して「第三者行為傷病届」を提出する必要があります。これは健康保険がその第三者(加害者)に求償するためのものです。また健康保険法による傷病手当金の支給がされた場合は、損益相殺の対象となるとされています。

加害者側 被害者側
治療費の負担が軽くなり、その分だけ支払能力が増すことになります。特に加害者の支払い能力が小さい場合、被害者への慰謝料など他の損害項目の賠償の余地が増すことになります。 事故によるケガの治療が長引いて治療費がかさみ、しかも被害者の過失が多い場合、被害者の負担が多くなります。しかし健康保険など利用するとこの負担が軽減されます。

労災保険

労働者の業務上の事由(業務災害)または通勤途上の傷病(通勤災害)等に対して、迅速かつ公正な保護を与えるとともに、被災者の社会復帰の促進等をはかり、労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする社会保険です。したがって、交通事故が労働者の通勤上または業務上に生じた場合は、労災保険が適用されます。

休業補償は、加害者からの賠償か労災のどちらか一方からしかもらえません。社会保険で受けた補償の分は、被害者から加害者に対して行う被害賠償請求額から差し引かれることになります。

政府保障事業制度

自賠責保険に未加入の車や盗難車、あるいはひき逃げで加害者車両の保有者が不明の場合の被害者は、加害者からの賠償を受けることが難しくなります。この場合、被害者は泣き寝入りのままと考えがちですが、そのような人を救済するために政府保障事業制度があります。

政府保障事業制度は、政府に対する公法上の補償請求権であって、損害賠償請求権ではありません。基本的に自賠責保険とほぼ同様の保障内容になっており、死亡の場合は3000万円まで、傷害の場合は120万円までの限度で支払われます。請求の手続きは、政府から委託された損害保険会社や責任共済の窓口に請求をします。補償請求権は、被害者が請求権を行使できるときから2年を経過すると、時効によって消滅します。死亡事故の場合は死亡日、傷害事故の場合は事故発生日、後遺障害が残る事故の場合は症状固定日が、それぞれの時効の起算点とされています。

政府保障事業制度が受けられる場合

(1)加害自動車の保有者が不明の場合
   (ひき逃げの場合)

(2)自賠責保険等の被保険者以外の者が損害賠償責任を負う場合
   (例えば、無保険車、泥棒運転などの場合)

損益相殺

具体的な損害額を決定するために、損益相殺が行われる場合があります。被害者が加害行為によって不利益ばかりだけでなく、利益を受けることもあり、その場合利益を差し引いたものが真の損害というべきだという考えから出たものです。

たとえば、事故で負傷した被害者が、自賠責保険から支払いを受け、かつ加害者に全額賠償してもらったような場合、これは賠償金の二重とりとなります。こうした不公平がないように、賠償金の算定には、自賠責からの支払い分は賠償金から差し引いて決定されます。また死亡事故の場合は被害者は損害として逸失利益を失うことになりますが、将来の生活費の支出を逃れますので、その分を差し引いた残額が損害額となります。この差引計算を損益相殺といいます。

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