2 任意保険(保険会社による保険)
任意保険は、保険会社が売り出している自動車保険であり、自賠責保険とは違い、加入するかどうかは自動車の所有者の自由意思です。現在では車を所有している70%近くの人が加入しています。
人身事故が起き損害が発生した場合、まずは自賠責保険から損害が補填されます。この保険金で損害額がカバーできない場合に補うのが任意保険です。人身事故による損害額が自賠責保険の限度額を超えた場合、例えば死亡による損害額が6000万円で、このうち自賠責保険で3000万円だけ支払われたとき、残りの3000万円は加害者自身の負担になりますので、それをカバーする保険が任意保険となります。物損事故の場合は、自賠責保険では補償されませんので、任意保険に入っていると、契約の内容に応じた補償を受けることができます。任意保険は、その種類ごとに保険会社の支払責任が異なっていて、また平成9年の保険の自由化に伴い任意保険商品は多様化しています。自由化前の自動車保険は画一的な補償内容となっておりSAP(自家用自動車総合保険)、PAP(自動車総合保険)、BAP(一般自動車保険)、ドライバー保険に分かれていました。現在は示談の交渉代行(事故を起こした加害者や運行供用者に代わって保険会社が被害者と示談交渉を行うなどの固有のサービス)付の保険など様々なものがあります。
現在加入している保険が補償する損害の範囲や内容について、必ず約款を確認しておきましょう。
保険の種類と保障内容
| 保険の種類 | 保障内容 | SAP | PAP | BAP | ドライバー保険 |
|---|---|---|---|---|---|
| 対人賠償保険 | 他人に人身損害があったときに自賠責保険の限度を越える分について支払われる保険 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 対物賠償保険 | 他人に物的損害があったときに車両破損の修理代などに支払われる保険 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 搭乗者傷害保険 | 自分(運転者または同乗者)が事故によって死亡、後遺障害またはケガをした場合に支払われる保険 | ○ | ○ | × | × |
| 人身傷害補償保険 | 自分の過失にかかわらず、交通事故による死傷を対象に損害額の範囲で100%補償 | △ | △ | △ | △ |
| 自損事故保険 | 他人を巻き込まず、単独事故で死傷した場合が対象 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 無保険車傷害保険 | 事故相手が保険に未加入だった場合に、自分の死傷を補償 | ○ | ○ | × | × |
| 車両保険 | 火災、台風、盗難、事故によって自分の車が損害を被った場合に補償 | ○ | △ | ○ | × |
| 任意保険 特約の例 |
運転車家族限定特約 | 家族以外の者が事故を起こしても保険料が支払われない代わりに保険料が割引かれる特約 | 代車費用特約 | 契約者が事故にあった場合に代車のレンタル費用を支払う特約 | 弁護士費用特約 | 加害者側との交渉を弁護士に委任する場合にかかる費用を補償する特約 |
|---|---|---|
| ※さまざまな種類の特約があるので、契約保険会社に確認することが大切 | ||
任意保険の加入率
任意保険の種類と加入率の全国平均は下記の通りです。なお都道府県別にみると、加入率が最も良い県は愛知県、最も悪い件は沖縄県です。
| 保有台数 | 79,236,095台 | 普及率 |
|---|---|---|
| 対人賠償保険 | 56,678,049台 | 71.5% |
| 対物賠償保険 | 56,633,987台 | 71.5% |
| 搭乗者傷害保険 | 46,415,156台 | 58.6% |
| 車両保険 | 30,314,382台 | 38.3% |
| (平成20年3月末現在データ) | ||
示談代行制度
加害者が被害者から損害賠償請求を受けた場合、または加害者が加入している任意保険会社が被害者から直接請求の規定に基づく損害賠償額の支払請求を受けた場合に、任意保険会社が、被保険者(加害者)に対して填補責任を負う限度において、保険会社の費用により、被保険者の同意を得て、示談または調停・訴訟の手続を行う制度をいいます。現在の任意保険には対人・対物ともに示談交渉付きのものが多くあります。
任意保険への請求
保険金は、被害者加害者の当事者間で示談が成立し、加害者が被害者に賠償金を支払った後に、加害者が保険会社に請求する加害者請求が原則です。しかし、当事者間で損害賠償額が確定した場合、損害賠償額が保険金額を超過することが明らかな場合、加害者の生死不明の場合など実際には被害者側からも、加害者の保険会社に直接請求できる場合もあります。これを被害者請求といいます。被害者請求をするにあたっては、窓口は加害者の加入している保険会社になりますので、加害者の保険会社を特定しておく必要があります。この直接請求権は、自賠責保険と同様で時効があり、これを過ぎると保険金は支払われませんので気をつけましょう。
加害者の車が無保険車であるときにも、被害者自身が任意保険の搭乗者傷害保険、自損事故保険や無保険車障害保険などに加入していれば、その保険金を受け取ることができますので、交通事故後速やかに自分の保険会社に連絡しましょう。保険請求権が発生してから60日以内に保険会社に請求しない場合は保険金が支払われないことがありますので注意しましょう。
保険金の一括払制度
加害者が任意保険に加入している場合、被害者はまず自賠責保険から支払を受け、不足分があるときに任意保険から支払うのが原則です。しかし自賠責保険と任意保険を別々に請求するのは煩わしいとの理由から被害者のために請求や支払の手続きを簡単にして迅速に支払うように「一括払の制度」が設けられました。現在は任意保険に加入している場合はほとんどが「一括払制度」と言われる方式で保険金が支払われます。
一括払の仕組みとしては、まず任意保険の会社が賠償金の全額を被害者に支払い、後に任意保険会社が自賠責保険から自賠責で認められた賠償額を回収することになります。この手続きは、加害者が契約している任意保険会社が窓口になって、任意保険と自賠責保険の両方の保険金の合計額を一括にして支払ってくれますので、問い合わせてみましょう。
加害者が示談金を払ってくれない場合
加害者と示談が成立したにもかかわらず、いつまでたっても示談金を支払ってくれない場合に被害者が直接保険会社に問い合わせたところ、保険会社はすでに加害者対して保険金を支払済みというケースがあります。
そもそも賠償金を支払うのは保険会社ではなく加害者です。
保険とは賠償金を支払って目減りした被保険者(加害者)の財産を補うためのものです。実際には加害者が保険会社に「支払い指示書」を出して、保険会社が直接被害者に対して支払うという方法が一般的ですが、中には悪質な者もいて自分が直接支払うと言ってそのまま持ち逃げしてしまうこともあります。このような場合は保険会社に過失があるとして損害を賠償してもらおうとすれば、その過失は被害者が立証しなくてはなりません。


