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2「被害者側」の過失

被害者本人だけでなく、被害者と何らかの関係があるものを「被害者側」としてとらえ、「被害者側」に過失があったと認められる場合には、被害者本人に過失があったのと同様に過失相殺をおこなう場合があります。
過失が認められるには、その者に責任能力があることが前提です。責任能力を備えるのは、一般的に小学校高学年(11~12歳)ころからとされますので、児童に過失があったとしても過失相殺ができないということになり、公平ではありません。そこで現在は、責任能力がなくとも、事理弁識能力があれば過失相殺ができるとする考え方がほぼ通説となっています。事理弁識能力を有するかどうかの判断は一概に年齢だけでは判断できませんが、5歳3カ月、5歳9カ月の幼児に事理弁識能力を認めた例があります。そうすると結局2、3歳の幼児には、過失相殺が認められないことになりますので、公平ではありません。そこでこの是正として「被害者側の過失」が考慮されることになりました。
被害者側の範囲の限定には、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をみなすとみられるような関係にある者」とされています。職場の同僚や、恋人同士については被害者側の過失を否定し、内縁の夫婦については肯定しています。両親から幼児の監護を委託された者については、被害者側の過失を否定しています。

妻を同乗させていた場合

夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したために傷害を被った妻が、第三者に対し損害賠償を請求する場合について、夫婦の婚姻関係が既に破綻に瀕しているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌できるとしています。

共同行為

Aが運転しBが同乗する自動二輪車と、これを停止させる目的で前方の路上に停止していたパトカーが衝突してBが死亡し、Bの相続人がパトカーの運行供用者に対し損害賠償を請求したという事案については、①AとBは、事故の前に交代で自動二輪車を運転しながら共同して暴走行為を繰り返し、パトカーに追跡されていたこと、②Aは、道路脇の駐車場に停車していた別のパトカーを見つけ、これから逃れるため制限速度を大きく超過して走行するとともに、その様子をうかがおうとして脇見をするという運転行為をしたためにパトカーに追突したものであり、Aの②の運転行為はAとBが共同して行っていた①の暴走行為の一環をなすものとして、過失相殺をするに当たりAの②の運転行為における過失をBの過失として考慮することを認めています。

好意同乗者

過失相殺の規定を類推適用しあるいは公平の原理を考慮して、損害が減額される場合があります。
運転者の好意によって無償で他人を車に乗せることを好意同乗といいます。無償同乗ともいいます。好意同乗者は、自賠法3条の「他人」に含まれますので、運転者は好意同乗者を死亡または負傷させた場合であっても損害賠償責任を負います。従来は無償で乗せたのだから減額しているケースが多かったようですが、現在ではたとえ無償であっても、他人を同乗させた以上は運転者や運行供用者は原則として全損害を負うべきで、無償同乗を理由に減額すべきではないという考え方が有力なっています。運行供用者ないし運転者と同乗者間に親子・兄弟、夫婦などの身分関係があるときには、被害者側の過失として減額を認めています。また同乗した被害者に、運転手が飲酒していることや、無免許運転であることを知っていながら同乗したなど、危険な運転状態を容認し、あるいは危険な運転を助長、誘発した帰責事由があるときは、減額事由となります。
危険運転を容認して同乗していたとして過失相殺がされた裁判例として、飲酒者が運転する自動車に同乗したが、勧められて同乗し、運転者が飲酒後1、2時間寝ていたことから酔いが醒めていると判断していた事例で10%減額された事例や、バイクの3人乗りでパトカーの追跡から逃走しヘルメットを着用せずに30%減額された事例、時速100kmを超える暴走運転の助手席に同乗し40%減額された事例、飲酒運転の可能性を認識し暴走行為を容認したうえシートベルトを装着せずに35%減額された事例、自動二輪車に飲酒運転であることを認識しながら同乗し10%減額された事例、一緒に飲酒した後に同乗しシートベルトを装着せずに25%減額された事例、運転者の飲酒を認識して同乗し15%減額された事例などがあります。

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