1 過失相殺の基準
損害額の算定と同様、多数の交通事故訴訟をある程度統一的に処理するために、事故態様ごとに過失割合を示した過失相殺基準が示されています。裁判実務では、次のような基準を参考にしながら個別の事情に応じて過失割合を増減させることが多いようです。
- 東京地裁民事交通訴訟研究会編
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〈全訂4版〉』(別冊判例タイムズ16号)(2004年) - 日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額』(通称「赤い本」)
- 日弁連交通事故相談センター専門委員会編『交通事故損害額算定基準』(通称「青い本」)
裁判所の過失相殺の基準
被害者の過失を考慮するか否かは裁判所の自由裁量で、裁判所が裁量権の範囲を逸脱した判断をした場合に限り違法になります。
また、裁判所は訴訟にあらわれた資料に基づき被害者に過失があると認めるべき場合には、賠償額を算定するについて職権をもってこれを考慮することができるので、賠償義務者からの過失相殺の主張は必要ありません。もっとも実際には、裁判所が職権でその事実の調査をするわけではないので、加害者が被害者に過失があったことを立証しなければなりません。
自賠責保険については、被害者に重大な過失がある場合に限り、2割から5割の過失相殺がされることになっており、裁判よりも被害者に有利な取扱いになっています。
自動車保険の過失相殺の基準
過失相殺は、交通事故によって生じた被害者の損害を、公平性の観点から、被害者の過失に応じて減額して賠償する制度です。自賠責保険と任意保険では、過失相殺の仕方が異なります。任意保険の場合は、ほとんどの事故で過失相殺を行います。
任意保険では重過失だけではなく、軽過失についても過失相殺の対象になります。これに対し、自賠責保険は、被害者に重大な過失があった場合に限って過失相殺を行います。重過失として認定されるのは被害者が、(1)信号を無視して道路を横断した場合、(2)横断が禁止されている場所を横断した場合、(3)道路上に寝ていた場合、(4)信号を無視して交差点に進入し衝突した場合、(5)センターラインを越えて衝突した場合などです。
過失相殺される割合も定型化されており、死亡と後遺障害が発生した場合は、20、30、50%の3段階、傷害の場合は20%だけです。これに対して、任意保険では、過失の程度を問わず、過失相殺をします。過失割合認定基準表から過失割合を導き、それに従って減額します 。


